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2018 春号 (4-6月)

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[達人に聞く!!] 自然観察法のイロハのイ

「チバニアン」のそうきざまれた地球の歴史を観察しよう

地球の歴史の中でまだ名前のついていない時代に、日本の地名が入る「チバニアン(千葉時代)」の名が刻まれるかもしれません。その決め手となる地層が千葉県市原市ようろうがわ沿いのとうそんざいすることが最近話題になりました。「千葉セクション」とばれるこの露頭を、達人のながしまきぬさんと観察しました。


養老川沿いの露頭は約77万年前の地層

――昨年、地球史の一時代に日本の地名が付くかもしれないと大きな話題になりました。

達人 46億年におよぶ地球の歴史の中で、時代を区分する地質時代のめいしょうがまだ決まっていないものがあります。今回、千葉セクションに見られる地層は、こうしんせいのカラブリアンと中期の時代区分の境界をしめすものとしてこくさいひょうじゅんしき(GSSP)※1こうに挙がっているのです(図「地球の歴史」)。正式に時代区分境界のGSSPとして にんていされると、この境界から始まる更新世中期(約77万~12万6千年前)に「チバニアン(千葉時代)」の名称が付けられることになります。

千葉セクション 養老川沿いの露頭
千葉セクションはぼうそう半島を流れる養老川沿いにある。雨天後のぞうすい時は注意が必要だ。
(千葉県市原市)

――GSSPににんていされるには?

達人 いくつかのじょうけんがありますが、国立極地研究所※2によれば次の3つの条件が重要です。①海底下で連続的にたいせきした地層であること、②地層中に、これまでで最後のぎゃくてんが記録されていること、③地層の堆積した当時のかんきょう変動がくわしく分かることです。地層が見やすくしゅつしていて、こうぞうてきな変形が少ないことも認定条件のひとつですので、観察がしやすい千葉セクションは有力だとわたしは思います。

46億年前から始まる地球史を構こう成せいする各地質時代には名前が付けられてきたが、更新世中期には未だ名前がなく、現在、「チバニアン(千葉時代)」が有力候補になっている。

地球の歴史

地球の歴史

――地磁気の逆転とは何ですか?

達人 地球がしゃくになっていることはみなさん知っていますね。げんざいの地球は北がS極、南がN極ですが、それが逆転することです。今の地球を正地磁気とすると、 にはS極とN極が反対の逆地磁気になることが何度もありました。地磁気の逆転はこの360万年だけを見ても11回起きていることが分かっています。そして千葉セクションの地層には最後の地磁気逆転の しょうが見つかっているのです。

更新世のカラブリアンから中期になる間に起きた地磁気の変化

地磁気は、地球の最深部、核かくで起こっている対流によって生じるといわれ、過去、何度も逆転を繰くり返してきたが、そのメカニズムは未だ明らかになっていない。 。
地磁気は、地球の最深部、かくで起こっている対流によって生じるといわれ、過去、何度も逆転をり返してきたが、そのメカニズムは未だ明らかになっていない。

――地磁気の逆転はなぜ分かるのですか?

達人 火山のふんで流れ出た溶岩が冷えて固まる時、ようがんふくまれている小さな磁石のような成分が地磁気に沿った向きにならびます。また、海底などの堆積物の中にも、堆積時の地磁気を記録している石が含まれています。このような石を調べることで地層が堆積した当時の地磁気を知ることができるのです。

こちらの地層を見てみましょう。ピンの色がちがいますね。さいしゅした石かで地磁気の向きを調べ、その違いによって色分けしています。赤のピンは逆地磁気だったころの地層、黄色のピンは地磁気が揺らいでいた頃の地層、緑のピンは現在と同じ正地磁気の地層になっています。(写真「ピンで色分けされた地層」

石を採取して調べることで地磁気の向きが分かる。地磁気の向きの違いはピンで色分けされている。また、77万年前の火山の噴火でり積もった白尾層にふくまれる花粉や微化石から、ここが海底であったことも明らかになっている。

ピンで色分けされた地層
ピンで色分けされた地層

――逆地磁気の地層の中にななめに走る層が見えますね。この層は何ですか?

達人 びゃくそう」と呼ばれる層で、77万年前におんたけさんながけんけん)が噴火した時の火山灰層です。この白尾層は地層の年代を決定づける重要な指標になります。この層が含まれていることで、地磁気逆転が約77万年前であったことのけつろんになりました。

地層の観察から地球の歴史を感じてほしい

――千葉セクションはGSSPに認められそうですか?

達人 認定されるかどうかは何とも言えませんが、有力候補だとされています。たいこうとしてイタリアにある2つの地層が候補に挙げられているのですが、千葉セクションのほうが、地磁気が逆転した層の幅が広く、観察しやすく、有利だとも言われています。一方、日本では天然記念物として指定する動きもあるようです。それだけちょうな地層なので、観察では、決してさわったり、けずったりしないようにしてください。

――地磁気の逆転を方位磁石でたしかめたりはできますか?

達人 地層中の磁力はじょうじゃくです。地磁気が逆転していた頃の記録を残しているといっても、現在の地磁気のほうがあっとうてきに強く、方位磁石が反対を指すことはありませんよ。

――千葉セクションにかぎらず、地層観察のポイントはありますか?

達人 地層を調べると、過去に地球で起こった出来事を知ることができます。また、自分の足元を見つめ直すきっかけになります。ただながめるだけでなく、各いきどうできる方といっしょに観察するといいかもしれません。ぜひとも地層を観察してゆうきゅうの地球の歴史を感じていただきたいですね。

※1 地質時代の境界を最も観察・研究しやすい地層として、国際地質学連合(IUGS)が世界に1カ所ずつ指定している。

※2国立極地研究所 http://www.nipr.ac.jp/info/notice/20170607.html

千葉セクションの成り立ち

海底に堆積した土砂や岩石が層になり、その地層に堆積当時の地磁気を記録している石が含まれている(図 1)。やがて海底からりゅうし、その後、しんしょくによって地上で観察できるようになった(図 2)。
緑は正地磁気、赤は逆地磁気の石が含まれている地層を示している。図では逆地磁気から正地磁気に急に変化しているように見えるが、地磁気があいまいな期間も存在する。

千葉セクションの成り立ち

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