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2008年 9月号

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彼らは世界をどう見ているか

動物の知覚世界はどうなってる?

生き物はその環境の中で、自分にとって意味あるものを認識できる感覚器官を備えている。
その感覚器官で得た情報で、彼らは独自の世界を築く。
生きるために、昼行性なら視覚を、夜行性なら聴覚や嗅覚を研ぎ澄ませているだろう。
とはいえ、視覚だけ、聴覚だけで彼らの世界が成り立つわけではない。
その動物がその時に使った感覚器官で得た情報すべてをそれぞれの流儀で統合し築きあげた世界こそが、彼らの知覚世界になる。
生き物たちの知覚、そのほんの一部を紹介しよう。


昼間活動する生き物の知覚を探ろう

味覚は足に。赤も紫外線も見える世界
ナミアゲハ

日本中で見られるアゲハチョウ科の代表種。幼虫の食草はミカン科の植物なので、母アゲハは、ミカン、カラタチ、サンショウの新芽に卵を産む。赤も紫外線も見える成虫は、赤や紫の花が好きで、レンゲ、ツツジ、ヒガンバナなどの花の蜜を吸う。

[彼らは世界をどう見ているか]イメージ
アゲハチョウ前足のふ節部分

アゲハチョウ前足のふ節部分

メスの成虫は産卵する際に飛び回りながら、主に視覚、補助的に嗅覚を使って幼虫の食草を見つけ出す。最終的に、前足の先端部のふ節で葉に触れてドラミング(葉を足でたたく行動)をして食草の味を確かめて卵を産む。前足下方のふ節の「感覚毛」に味覚細胞がある。

赤は見えない。でも紫外線が見える世界
セイヨウミツバチ

花畑などでよく見かけるが、ハチミツを取るために飼育されているハチ。紫や黄色の花を好み、赤い花には行かない。

[彼らは世界をどう見ているか]イメージ
複眼の構造

複眼の構造

昆虫は、ものを見るために1対の複眼を持つ。複眼はたくさんの個眼こがん(多い種では数万)が集まったものである。独立して異なる視野をとらえる個眼がたくさん集まっていることで、動くものをすばやく察知できる。複眼のほかに、数個(ふつうは3つ)の単眼もあるが、これらは光量の情報を伝えていると考えられている。

*ミツバチもアゲハチョウも、複眼構造は似ている。ただし、個眼の数は異なり、形も違う部分がある。

昆虫には見える紫外線

昆虫には見える紫外線

ヒマワリから反射する光を紫外線だけを通すフィルターをつけたカメラで撮影すると、右のように蜜腺みつせんの周りが黒く写る。紫外線が見える昆虫に対する、「ここに蜜があるよ」という花のサイン。

『動物の目、人間の目』(大月書店)より

生き物によって異なる可視光(見える光の範囲)

生き物によって異なる可視光(見える光の範囲)

ミツバチは、人間に見える赤が見えず、人間には見えない紫外線が見える。同じ昆虫でもアゲハチョウは、紫外線も赤も見える。昼行性の鳥類の多くも同様である。*nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)

ヒトよりも豊かな4原色の色彩世界を持つ
ニワトリ

数千年前に南アジアにいた野鶏やけいを改良した鳥で、典型的な鳥類の特徴を備えている。日の出とともにコケコッコウと鳴いて活動し、たそがれ時にはもう就寝という昼行性。

[彼らは世界をどう見ているか]イメージ

鳥類の視細胞

動物の視細胞は、色を見分けるための「錐体すいたい細胞」と、わずかな光でも反応する「桿体かんたい細胞」の2つに大きく分けられる。ニワトリなど昼行性の鳥類は、錐体細胞だけを持っている。彼らは、豊かな色彩で世界を見ているが、桿体細胞を持たないため、夜は見えず、活動できない。

攻めと守りに徹した感覚器官を持つ
草食動物VS肉食動物

草食動物はディフェンスの目と耳

目は顔の横。視野の中心も周辺も視力はほぼ均等。周りのものに絶えず注意を払いながら、均等な視力で広い視野を見渡せる。耳も使って、四方からの音をキャッチする。

肉食動物はオフェンスの目と耳

目は顔の前。両目で獲物との距離を正確につかむ。目の中心部分に視細胞が密集していて、正面が一番よく見える。耳も、前方の獲物の音が集中して聞こえる構造。

[彼らは世界をどう見ているか]イメージ
肉食動物と草食動物の視野と視力

肉食動物と草食動物の視野と視力

シマウマやウサギなどの草食動物の目は、ふつう網膜の中心部分が発達していないため、対象を鮮明にとらえることはできないが、目が顔の両脇についているので、広い範囲を見るのに適している。一方、ライオンやトラなどの肉食動物の目は、網膜の中心部分が発達していて、対象をはっきりとらえることができる。また、目が顔の前方に向いているので、全体の視野は広くないが、両目の視野が重なる部分で立体視ができる。人間の視覚も肉食動物に近い。


視程に限界のある水中の生き物は?

超音波を出して、獲物を察知!
バンドウイルカ

海中で生息する哺乳類。時には時速30kmで獲物を追うので、速く泳ぐために適した流線型の形をしている。通常群れで行動し、魚のほかイカや甲殻類も食べる。水面付近や近くの獲物は目で追うが、多くの場合、超音波を出して獲物を探し当てる。

[彼らは世界をどう見ているか]イメージ
イルカの頭部の構造

イルカの頭部の構造

鼻孔で作り出した超音波(人間が聞くことのできる周波数1万6000Hzよりはるかに高い周波数の音)は、メロンと呼ばれる脂肪層で増幅されて、前方に発射される。反響音は下あごから入り、増幅されて内耳に伝わる。イルカは口笛のようなホイッスル音も出す。この種の音は、求愛や群れの中での会話に使われるもので、人間にも聞こえる。

エコロケーションの仕組み

エコロケーションの仕組み

泳ぎながら超音波を発し、その超音波が物に当たり、はね返ってくるのを内耳でとらえることにより、周囲の物体の存在を知る。この仕組み(エコロケーション)によって、獲物がどの方向にどれくらいの速さで泳いでいるかを察知し、視程に限界のある水中でも獲物を捕らえることができる。


闇夜で活動するために備えたものは?

鋭い視覚と聴覚が武器
フクロウ

真っ暗闇でもノネズミなどの獲物に、羽音を立てずに接近し、巧みに捕らえるフクロウ。目には錐体細胞と発達した桿体細胞を持ち、かすかな光でも見ることのできる敏感な視覚と、微小な音でも音の源を正確に突き止めることができる鋭敏な耳を持つ。聴覚は、左右の耳の穴の大きさや位置が異なるので、左右の耳の音の強弱などの差から、音源の位置が分かる。

フクロウ

メスのフェロモンに導かれるオス
ヤママユガ

夜活動するガは、あまり視覚に頼らないため目が小さい。オスは大きな触角を持ち、メスが分泌するかすかな匂い(性フェロモン)を感じ取ることができる。

ヤママユガ

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