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2007年 9月号

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ヨッシーのお米一話

第6 回イネの"根"

[ヨッシーのお米一話]イメージ

もうすぐ実りの季節。収穫を前に、イネの「根」に焦点を当ててみよう。根は、田んぼの中で土や水に守られて、巧みに水や養分を吸収する働きをしているのに、あまり注目されないんだな。どうしてだろう

根、土、水、役者ぞろいの田んぼのドラマ

根は、発芽の段階から生長し、葉が出るたびに新たな根を出してどんどん伸びていく。根の先端近くの根毛も、盛んに養分を吸収して伸びる。根が最も発達するのは、穂が出る前の1カ月間。イネの根の特徴は興味深いよ。

例えば、土に根を張る植物を水田で育てると、酸素不足で根が呼吸できなくなってしまう。それに、根の付近に硫化水素が生じて根を傷めてしまうんだ。でも、水生植物のイネなどには、根を守る仕組みがある。根や茎葉にはパイプのような空洞部分(破生通気組織)があって、イネの地上部で取り込まれた酸素が、そこを通して根に送られるんだ。その酸素が根における呼吸に使われたり、根から放出され、土中の鉄と化学反応をして赤サビのような酸化鉄の膜を作る。それがよろいのように根を守っているのさ。

田んぼの良し悪しは、土壌や水質に大きく左右されるんだ。水田には、水はけの良い「乾田」と、水はけの悪い「湿田」があるのを知ってるかい?乾田では、水を落とすと土壌がよく乾いて、土の中に酸素が入りやすい。また、水をためているときも適度に水が浸透するから、その水に乗って酸素が多く運ばれるんだ。だから、土壌に硫化水素などの根の生長を阻害する物質ができにくく、根が健全によく育つ。反対に、湿田では酸素の供給が少なくなるので、根が生育不良になりやすい土壌になってしまうんだ。イネは自分の組織でも根を守っているけれど、土壌や水にも助けられているんだね。

田んぼの水の下には、イネが根を張る厚さ15?くらいの土( 作土さくど)があり、さらにその下に水を通しにくい土(すきどこ層)がある。根の一部は、すき床層を突き抜けて、さらにその下の層まで伸びるんだ。伸びた根はイネが刈り取られた後、土の中で腐って肥料になるんだけど、根が通った跡は、細い穴になって”水漏れ”原因のひとつになる。それに、田んぼを干したり水をためたりしているうちに、水の通り道となる微細な亀裂もたくさんできてしまうんだ。だから、春の田植え前には水を入れて田んぼの土をかき回す「しろかき」をして、穴や亀裂を細かい土の粒子でふさいでいるんだ。

ところで、田んぼは深く耕すことがポイント。泥の下部にたまったマンガンや鉄などの微量要素を引き出すことができるし、作土も厚くなって根の発達が促されるからね。ついでに言うと、多くの田んぼでは、夏の一定時期と収穫後に水を干して土の中に空気を入れているね。おコメの先生、山口県農業試験場の藏重宏史さんは、「こうすると、土の中で眠っていた有機物の中のチッソが、微生物などの働きで根が吸収しやすい状態に無機化されるのです」と、解説する。

そうだったのか。日本を含めアジアの人々は、何千年も前から、根、土、水が助け合い、協力し合って繰り広げる「田んぼのドラマ」を演出してきたんだな?。農家の人が、どれほどの熱い思いでイネを育てているか。これこそ性ドラマだね!(取材・吉田光宏)

【田んぼの違いと根の生長】
イネの根は、湿田よりも乾田の方が生長しやすい。収穫量も乾田の方が多くなりやすい。日本の田では湿田は減ってきている。
田んぼの違いと根の生長

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