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2007年 8月号

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ヨッシーのお米一話

第5回 イネの開花


[ヨッシーのお米一話]イメージ

一生のうちでも開花はクライマックス。イネも植物だから、ちゃんと花が咲くんだよ。開花時間わずか1時間から2時間半。短いんだけど、次の世代に命をつなぐ神秘的な営みなんだ。チャンスがあったら、田んぼに出掛けて詳しく見てみた


地味だけど、瑞々しく美しいイネの花

イネの花が咲くのは、7月下旬から8月初めの夏の一番暑いころ。田んぼには水がいっぱい張ってあって、イネは活発な生長ができる。花といっても、花びらはなく、代わりに籾殻もみがらになるえいの上側がパカッと割れるのが「開花」なんだ。咲き始めるのは午前中で、穎の内側にある鱗被りんぴという部分が水分を含んで膨らみ、穎を内側から押し開く。すると中から6本の雄しべが顔をのぞかせ、長さ6〜8?にスーッと伸びる。その時に雄しべの先にあるやくという花粉貯蔵庫から花粉が降り注いで、穎の底にある雌しべに受粉するという仕組みで、開花からわずか10分から20分の早業さ。

葯の大きさは小さいけれど、身近な花でいうとユリの花の雄しべを連想してもらえばいい。やがて穎がピタッと閉じてしまうと、葯が外に取り残される。用済みってわけなんだけど、なんだか哀れを誘うなあ。

こうした開花は晴天の場合で、雨が降っていると花は咲かず、閉じた穎の中で受粉してしまう。これを閉花受粉という。確かに受粉はするんだけど、葯が玄米の先端部に残り、着色した米(見た目が良くないコメ)になる場合がある。だから、開花のころには晴天が望ましいんだね。暴風雨のときには、開花のメカニズムが狂ってしまうのか、開いてしまうこともある。

ちょっと驚いてしまうのは、雌しべは穎が開く直前にはほとんど受粉を完了しているってこと。それじゃあ、なぜ葯が外に出てからも、花粉をふりまくんだ? と疑問がわいてくるのも当然なのだが、自分の遺伝子を少しでも広めようとする「戦略」と考えるのが自然だろう。このため、品種の違う田んぼのイネが自然に交雑することもよく起こり、次の年に種籾として利用しようという農家には困っちゃうことなんだ。山口県農業試験場のおコメの先生、藏重宏史さんは「他の穎の花粉で受粉する割合は全体の1%。小さい数字と思われるかもしれないけど、次の世代への影響を考えると、この数字がとても大きく感じますね」。

イネは風で花粉を運ぶ風媒花。葯は黄色なんだけど、花は地味だね。昆虫や鳥をひきつけて花粉を運んでもらう必要がないからだろうね。

茎の中から淡い黄緑色の穂がス〜ッと出てくると、その日のうちにたくさんある穎の最初の花が咲き始める。藏重さんは「穂は表面が水に濡れたようで本当に瑞みずみず々しいのです。アップで見ると感動的ですよ」。日本のことを「瑞穂の国」って言うのがとってもよく分かるなあ。この穂が出る時期がイネが一番水を必要としているときで、このころ田んぼに入れる水は「花水」と呼ばれる。水稲というだけあって、水とおコメって、田植えから開花まで水との関係が深いわけだ。水とおコメ…。おっと、夕ごはんを炊く電気釜の水加減をチェックし忘れちゃった。ドン・マイ!(文・吉田光宏)

開花し始めの花の中
■開花し始めの花の中
鱗被が膨張して、閉じていた内頴と外頴の先端部が少し開き、ここから雄しべの葯が外に出始める。
開花盛りの花の外観
■開花盛りの花の外観
開頴角度は最大で25°〜30°。6 本の雄しべの花糸が伸びきり、葯が頴の外側にはみ出す。
開花したイネ
開花したイネ

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