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[元気な地域のつくりかた]

鹿しま肝付きもつきちょう
テクノロジー活用で人と人がつながり
高齢こうれい者の生きがいを生む

「共創のまち・肝付」のキックオフイベントにて(画像提供:肝付町)
共創きょうそうのまち・肝付きもつき」のキックオフイベントにて(ぞうていきょう肝付町きもつきちょう
鹿児島県肝付町

多くのこんなんな集落が点在てんざいする鹿しま肝付きもつきちょうせんたんじゅつを使った高齢こうれい者とのコミュニケーションに活路を見いだした同町では、いま、「せんたんじゅつじっしょうフィールド」としていきかっせい化を図り、高齢こうれい者の「生きがい」につなげる取り組みが進められている。


こんなん集落が「ICTアイシーティー肝付きもつきちょう」へ進化

化・こうれい化が進んでいく中で、住人の50%以上が65さい以上となり、けいざい的・社会的に共同生活を続けることがむずかしくなった集落が、全国的にえている。鹿しまきもつきちょうも、そんないきのひとつだ。

2005年7月にたかやま町とうちうら町ががっぺいしてたんじょうしたこの町では、1万5572人(2018年8月31日げんざい)の住民が132の集落にてんざいしてらす。132のうち33集落がこんなんな集落だ。

こうれい者が多い集落の社会的共同生活を支援するため、ICTアイシーティーInformationインフォメーション andアンド Communicationコミュニケーション Technologyテクノロジーじょうほう通信じゅつ)を活用した見守りサービスをどうにゅうした同町では、2015年7月に「きょうそうのまち・きもつきプロジェクト」をスタートさせた。町をICTアイシーティーじっしょうフィールドとしてぎょうや研究機関などにていきょうすることで、さいせんたんICTアイシーティーあんで利用できるかんきょうをつくり、事業所の参入や人口ぞうなどのかっせい化につなげようという取り組みだ。

きっかけは、東日本大震災だいしんさい

そのキーマンの一人が、きもつきちょう役場ふく課参事けんほうかつえん係長でけんけいさん。ICTと出会うきっかけは、2011年の東日本だいしんさいだった。じょうきょうかくにんなんれんらくをするさい、孤立する集落がてんざいする同町のげんかいを感じたという。

きもつきちょうにもなみけいほうが発令され、テレビでなんびかける放送が流れました。私は、海岸の集落いっけんいっけんに電話をしてじょうきょうを伝えましたが、ようやく全員に伝え終えたときには、すでになみとうたつ予想時刻を過ぎていたんです。結果的になみえいきょうはほとんどありませんでしたが、この出来事を通じて、『じょうほうは、相手が受け取ってはじめて意味を持つ』ということに、あらためて気付かされました。何より大切なのはおたがいにわかる言葉でじょうほうを伝えること。むずかしいせんもん用語や知らない言葉では通じません」

デジタルツールでつながり合うことで高齢こうれい者が“生きがい”を感じる

テレビ電話から始まりICTアイシーティーのうせいを発見

こうした経験けいけんて、きもつきちょうどうにゅうしたのが「テレビ電話」だった。役場・社会ふく協議会・町立病院などの関係機関と、こうれい化が進んだ集落の住人宅を結び、じょうきょうかくにんなんれんらくいっせいに行えるようにしたのだ。きもつきちょうは2011年6月、町内ぜんいきそうえんちょう306kmの光ファイバーもうせい。これを機に「いきほうかつえんセンターのう強化事業」として、役場や社会ふく協議会、病院せつこうれい者の住宅をつなぐテレビ電話32台がせいされた。

おどろいたことに、90代のおばあちゃんたちがにちじょう的にテレビ電話を使いこなしているんです。やはり『あの人の顔が見たい』『あの人に相談したい』という強い動機があるからでしょうね。昔からのアナログな人間関係をしていくためにこそ、デジタルツールが必要なのだと強く感じます」

テレビ電話を通じておたがいに見守り合うことで、集落の見守りのやくわりになっている自治会役員や民生委員などのたんけいげんにも役立った。さんは、テレビ電話のどうにゅうをきっかけに、こうれい者のしきが変化していく様子をありありと感じたという。「『今日も会いたいなぁ、心配しているかも……だから元気でいたい』とお年寄りの方が思うようになりました」

肝付町がICT活用に取り組むきっかけとなったテレビ電話
肝付町がICT活用に取り組むきっかけとなったテレビ電話
きもつきちょうがICT活用に取り組むきっかけとなったテレビ電話(ぞうていきょうきもつきちょう

きょうそうのまち・肝付きもつき」がスタート

テレビ電話の取り組みが広く知られるようになると、ITアイティーInformationインフォメーション Technologyテクノロジーじょうほうじゅつぎょうからビジネスのていあんが相次ぐ。ITには明るくないさんだったが、ぎょうのエンジニアたちの話を聞くと、かれらの「いきの人々の役に立ちたい」という思いは自分たちと同じだと気付いた。使っている言葉がちがうから伝わりにくいだけなのだと。

ちょうどそのころさんがかく調整課に異動となり、当時かく調整課でじょうほうせいさくたんとうしていたなかくぼさとるさん(げんざいふくかいけん係長)と席が向かい合わせになった。

少年時代、パソコン通信にちゅうになったというなかくぼさんは、かねてからじょうほうネットワークの重要せいにんしきしていた人物である。なかくぼさんは「ITにくわしいじょうほうせいさくたんとう者」として、通信ネットワークもうせいされた先にあるきもつきちょうの未来を、さんは「町の人たちのらしの実体を知る保健師」として、住民のらしの未来を語り合うようになった。

その中で生まれたのが「住民のらしにそれだけ課題があるならば、町をITのじっしょうフィールドとして開放したらどうだろう?」というアイデア。そしてそのアイデアは2015年度、「こうれい者とITきょうそうのまち事業」としてスタートを切った。2018年にはICTすいしん室をせっそうしょうから出向してきたまつおかりょうろうさんが室長にしゅうにんすると、きもつきちょうのICTの取り組みはさらに加速した。

「共創のまち・肝付」のロボット導入実験でやってきたPepperペッパー(画像提供:肝付町)
きょうそうのまち・きもつき」のロボットどうにゅう実験でやってきたPepperペッパーぞうていきょうきもつきちょう
Pepperとの交流実験により発話が増えた高齢者もいる(画像提供:肝付町)
Pepperとの交流実験により発話がえた高齢者もいる(ぞうていきょうきもつきちょう
「孫には負けない」を合言葉に行われたプログラミング講座(画像提供:肝付町)
「孫には負けない」を合言葉に行われたプログラミングこうぞうていきょうきもつきちょう

いき住民の安心・安全につながりぎょうじっしょうフィールドとしても貢献こうけん

GPSジーピーエスを使った見守りサービスをじっしょう

きもつきちょうでは、これまでにどんなじっしょう実験が行われてきたのだろうか。

そのひとつが、にんしょうによるはいかい者を人力で発見するための「はいかい訓練」だ。訓練では、住民をふくすうのチーム(そうさくはん)に分け、地区内のにんの場所までバスでどうそうさくはんは交流センターにもうけられたそうさくほんれんらくを取り合い、スマートフォンアプリを使いながら、GPS(Globalグローバル Positioningポジショニング Systemシステム:全地球そくシステム)とうさいのビーコン(無線発信機)をけいたいした「はいかい者役」をそうさくする。実験に参加したのは、こうれい化をえたICTアイシーティーサービスをてんかいしているかぶしきかいしゃLiveRidgeライブリッジ

いきの人たちは「自分たちの目にたよるだけではげんかいがある」と感じていた。そこへ、見守りそうさくクラウドサービスのじっしょう実験がていあんされたため、大きな期待が集まった。1回目のじっしょうではテクノロジーの有用せいを実感したが、一方でコンピュータの不具合にもわれ、テクノロジーだけにたよることのけんせいがわかった。結局はテクノロジーと人、両面からささえることの大切さを知った良いじっしょうだったと振り返る。

「参加したぎょうも、『はいかい訓練を通じて、サービスのこうに期待を持てた』と話していました。やはり、そのいきに強いニーズがあってこそ、ゆうこうな実験結果が得られるのだと思います」(さん)

LiveRidgeの位置情報サービス「Smartスマート Mapマップ」を使った徘徊模擬訓練。高齢者のいる場所をインターネット上の地図で表示する
LiveRidgeの位置情報サービス「Smartスマート Mapマップ」を使った徘徊模擬訓練。高齢者のいる場所をインターネット上の地図で表示する
LiveRidgeの位置情報サービス「Smartスマート Mapマップ」を使った徘徊模擬訓練。高齢者のいる場所をインターネット上の地図で表示する
LiveRidgeライブリッジの位置じょうほうサービス「Smartスマート Mapマップ」を使ったはいかい訓練。高齢こうれい者のいる場所をインターネット上の地図でひょうする(ぞうていきょうかぶしきかいしゃLiveRidgeライブリッジ

肝付きもつきちょうから全国へ、そして世界へ

きもつきちょうでは、AIエーアイArtificialアーティフィシャル Inteligenceインテリジェンス:人工のう)を使って乗り合いタクシーを効率こうりつ的に運行するシステムや、コミュニケーションロボット(Pepperペッパー)との交流を通じてこうれい者を元気にする取り組み(P.19写真)など、数々のじっしょう実験が行われている。

こうしたじっしょう並行へい こうして、「孫には負けない」を合言葉に、こうれい者に向けたスマートフォンやタブレットの使い方などの各種こうしゅう会をかいさい(P.19写真)。小学生のプログラミングじゅぎょうこうれい者に受けてもらう試みでは、こうれい者と小学生の交流の機会が広がった。テクノロジーに少しずつれることで、生活の場をゆたかにするツールとしてICTアイシーティー馴染なじみつつある。

いきの課題かいけつは、そのいきこうれい者だけでなく日本中、さらに世界中の人々の幸せにつながっていく。数十年先に必ずや直面する日本全体の課題をかいけつするフィールドとして、きもつきちょうは、今日も最前線でチャレンジを続けている。

NTTドコモが開発した「AI運行バス」を試験運行。決められたルートはなく、乗車場所と目的地からAIが最短ルートを計算し、利用者に乗車時刻を知らせる(画像提供 :NTTドコモ)
NTTドコモが開発した「AI運行バス」を試験運行。決められたルートはなく、乗車場所と目的地からAIが最短ルートを計算し、利用者に乗車こくを知らせる(ぞうていきょうNTTエヌティーティードコモ)

NTTエヌティーティー西日本とのICT連携れんけい協定を結び、次なる取り組みへ

きもつきちょうとNTT西日本鹿しまてんは、「きもつきちょうにおける地方創生そうせいじつげん」に向け、経済けいざい・産業、生活かんきょうけんふく、教育・文化、ぎょうざいせい・協働などの各分野におけるICT利活用のれんけい強化を目的として、2017年3月に「ICTれんけい協定」をていけつした。協定の期間は2020年3月までの3年間。今後は、新たな通信じゅつとして注目される「LPWAエルピーダブルエーLowロウ Powerパワー Wideワイド Areaエリア:省電力・ちょうきょの通信をじつげんする省電力こういき無線通信)」のじっそうに向けた取り組みなどを行っていく。

取材先:(写真右から)肝付町役場 ICT推進室 室長 松岡遼太郎さん 福祉課 包括支援係長 能勢佳子さん 福祉課 介護保険係長 中窪 悟さん
取材先:(写真右から)
きもつきちょう役場
ICT推進すいしん室 室長 まつおかりょうろうさん
ふくほうかつえん係長 けいさん
ふくかいけん係長 なかくぼ さとるさん

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