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[元気な地域のつくりかた]

ちょうかいさんとびしまジオパーク
“大地”の価値かちを見つめ直す
ジオパーク活動でいき貢献こうけん

鳥海山・飛島ジオパーク “大地”の価値を見つめ直すジオパーク活動で地域に貢献
秋田県由利本荘市、秋田県にかほ市、山形県遊佐町、山形県酒田市

秋田県と山形県のけんきょうにそびえる鳥海山と日本海にかぶ飛島。
このエリアは2016年に「鳥海山・飛島ジオパーク」として認定にんていされた。
その背景はいけいには、「鳥海山・飛島の価値かちを見直して、いきを元気にしたい」という
いき人々ひとびとの思いがあった。


取材先: 岸本誠司(きしもと・せいじ) 
取材先:
岸本誠司(きしもと・せいじ)
鳥海山・飛島ジオパークすいしん協議会・しゅにん研究員。兵庫県出身。せんもんかんきょうみんぞく学。2005年、東北げいじゅつ工科大学東北文化研究センターににんかんきょうみんぞく学のてんから飛島の文化けいしょう活動を続け、2015年よりげんしょく

山と海の恩恵おんけいを受けて発展はってんしたいき

秋田県と山形県のさかいに位置する鳥海山。日本海から標高2,236mのさんちょうまでのびるなだらかなりょうせんを持つこの山は、「」ともばれ、古くからこのいきのシンボルとして親しまれてきた。

鳥海山にる雨や雪は地下にしんとうし、長い年月をかけて川となり海へ流れ出る。ふもとの平野では、この山からのゆたかな水を利用し、米などの農作物のさいばいさかんだ。また、海に運ばれた山の栄養分がりょうしつな漁場をつくり、このいきゆたかな海の幸をもたらしている。

そして、鳥海山のふもとから西の日本海にかぶ3km2へいほうキロメートルの小さなとう「飛島」は、古くから、この海のめぐみを生かし漁業で栄えてきた。げんざいも約200人がらす、秋田・山形県でゆいいつの有人島である。

山と海の恩恵を受けて発展した地域

いき活性かっせい化を目指して

ゆたかな自然のめぐみを受けてはってんしてきたこのいきだが、日本の地方都市に共通する課題ともいえる、人口げんしょうこうれい化による産業のにない手不足などに直面している。

秋田県にかほ市は、この地域に新しい価値を見いだし、活性化していく取り組みとして、すでに同県で3地域が認定を受けていた「ジオパーク」に注目。秋田県ほんじょう市、山形県まちおよびさか市に相談し、県をまたいだ3市1町が連携して2016年に日本ジオパークとしての認定を受けた。

「ジオパークとは、『ジオ(地球・大地)』と『パーク(公園)』を合わせた造語です。地層や火山などを見て地球の成り立ちに気づき、そこに生きる動植物や人々の暮らしをつなげて考える場です」と、認定に向けて尽力した一人、鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会の岸本誠司さんは説明する。

地学から学ぶ「鳥海山・飛島エリアはどんなところ?」

鳥海山・飛島ジオパークのアドバイザーをつとめるはやししんろうさんに、 火山しつ学から見た鳥海山と飛島のとくちょうを聞いた。

取材先:林信太郎(はやし・しんたろう)
取材先:
林信太郎(はやし・しんたろう)
秋田大学教育文化学部きょうじゅせんもんは火山しつ学。北海道大学理学部卒業。30年以上にわたり鳥海山をメインの研究テーマとする。(ぞうていきょう/鳥海山・飛島ジオパークすいしん協議会)

鳥海山

山の始まりは約60万年前

鳥海山は今から約60万年前に火山活動を始めた、かくわかい山です。ふんり返し、大量のようがんふんしゅつすることで、きれいなえんすい形の山になりました。約40万年前には、すでに標高2,000mほどに成長していたと考えられます。約60万年前から16万年前まで続いた火山活動は「ステージI」と区分けされ、げんざいの鳥海山の約3分の2の体積はこの時期にふんしゅつしたようがんです。

崩壊ほうかいと成長のり返し

火山のそうは、くだけたようがんざんばい、軽石などが積み重なってできています。このようなそうはもろい部分が多く、しんすいじょうふん、地下にマグマが入り込むことなどによって、山の一部がくずれ落ちる「さんたいほうかい」が起こります。鳥海山は、約60万年間の歴史の中でいくとなくさんたいほうかいり返し、とくちょう的な東西二つのカルデラ(火山活動によってできたくぼ)が生まれました。ほうかいと成長をり返しながら、長い時間をかけて変化にんだ鳥海山の形がつくられていったのです。

水のめぐみをもたらす山

鳥海山をはじめ東北地方の日本海沿えんがんは積雪の多いいきとして知られています。大陸からく寒冷でかんそうした季節風が日本海をわたさい、南からのあたたかい海流がもたらすすいじょうふくんだ空気が鳥海山とぶつかることで、このいきに大量の雪をらせるのです。鳥海山のようがんそうはすき間だらけのため水をみやすく、これが長い時間をかけて地下にしんとうしてゆうすいや川になり、やがて海に流れ出ます。こうした水のじゅんかんが、さまざまな動植物の生きるかんきょうを整え、人間の命を育んできました。鳥海山は、火の山であると同時に水の山でもあるのです。

①山体崩壊でできた流山(九十九島/にかほ市)
さんたいほうかいでできた流れ山(じゅうしま/にかほ市)

飛島

海から生まれた島

飛島は、1,500万年ほど前に海底火山からふんしゅつしたざんばいや岩石が積み重なり、それがかく変動によってりゅうしてできた島です。島全体が平らなのは、波の働きでけずられたから。大地のりゅうと海水によるしんしょく、海面のじょうしょうこうり返されることでどくとくな「かいせいだんきゅう(かいだんじょうの地形)」ができあがりました。島には火山に由来する岩やれきなどが多く見られます。

②飛島の全景
飛島の全景
③海成段丘(ゴトロ浜周辺/飛島)
海成段丘かいせいだんきゅう(ゴトロ浜周辺/飛島)

ジオパークの考え方と仕組み

ジオパークの考え方は2000年ころにヨーロッパで生まれた。「ジオパークには、3つの活動の柱があります」と岸本さんは話す。「1つ目はそう・岩石・地形・火山・だんそうなどの地球の成り立ちを知る手がかりとなるげん(ジオサイト)を『ぜん』すること。2つ目は『教育』。そのいきの成り立ちが動植物やせいたいけいとどんな関係があるのか、そこにらす人間の歴史・でんとう・文化にどんなえいきょうあたえてきたのかを、伝えていく活動です。そして3つ目が『持続のういきづくり』です。具体的な活動の一つに、いきの人や観光客に向けた『ジオツーリズム』があります。けんしゅうを受けたジオガイドがそうとくちょう的な地形などを案内し、そのりょくを伝えます」

ジオパークには、ユネスコ(こくさい連合教育科学文化機関)がすいしんするプログラムでにんていする「ユネスコ世界ジオパーク」と、「日本ジオパークネットワーク」がにんていする国内ばんの「日本ジオパーク」がある。どちらのジオパークも、にんていを受けて「ジオパーク」を名乗れば終わりという活動ではない。多くの人がそのいきおとずれ、地球のいとなみや自然と人のつながりについて考え、「守りたい」、「また来たい」と感じてもらえるような活動をけいぞくしていくことがかんじんなのだという。日本ジオパークでは、4年に1度の再にんていしんがあり、じゅんを満たさなければにんていを取り消されることもある。「したがって、つねいきを高めていくための工夫を続けていく必要があります」(岸本さん)

3市1町の連携れんけいによるジオパークのたんじょう

鳥海山・飛島ジオパークは、こうそうから約2年でにんていされた。近年では最速だという。

にかほ市の発案にほんじょう市、まちさか市がおうじ、じゅん会が立ち上がったのは2014年。2015年3月には「鳥海山・飛島ジオパークこうそうすいしん協議会」へとはってんし、3市1町の自治体と商工会などの関係だんたいを中心にたいせいこうちく。また、しつ、観光、いきづくり、せいたいけいなどのせんもん家をアドバイザーとしてむかえたほか、いきの研究教育機関にぞくする研究者たちによるサポートたいせいを整えた。「県をまたいだふくすうの自治体がかかわる鳥海山・飛島エリアですが、意見の食いちがいなどはなく、さまざまな取り決めがスムーズに進みました」と岸本さんはり返る。

関係者の認識にんしき統一とういつし、戦略せんりゃく的に取り組む

日本ジオパークネットワークにめいするいき同士は、さまざまなじょうほうを共有し、れんけいし合いながら活動する。「わたしたちはにんていを目指すにあたって、ネットワークの中でジオパークの考え方をかいし、他のいきけいけんから多くの学びを得ました。その中で、早いだんかいから自分たちのエリアのとくちょうりょくめいかく化しておくことが大切だと考えたのです」と岸本さんが話すとおり、協議会発足時には「日本海と大地がつくる水と命のじゅんかん」というメインテーマが決定した。

2015年6月には、ジオガイド養成こうかいこう。ジオパーク活動のポイントはジオツーリズムであるとのかいから、早い時期よりそのにない手の育成に力を入れて取り組んだ。

法体の滝/由利本荘市
ほったいたきほんじょう
元滝伏流水/にかほ市
元滝伏流水もとたきふくりゅうすい/にかほ市
釜磯の湧水/遊佐町
釜磯かまいそ湧水ゆうすい遊佐町ゆざまち
玉簾の滝/酒田市
玉簾たますだれたき/酒田市
勝浦港/飛島
勝浦かつうら港/飛島

景色を見て、地球のいとなみを知る

まちにあるかまいそ海水浴場。夏は海水浴客でにぎわうこのすなはまのあちこちでは、ぽこぽこと水がわき出す様子が見られる。これは海水ではない。このいきは鳥海山から流れ出たようがんでできており、鳥海山のようがんそうを長い年月をかけて通ってきた地下水がわき出しているのだ。さらにおきでも海底からゆうすいが出ており、山の栄養分が海へと運ばれ、ゆたかな海洋げんを生み出している。

ぽこぽこと出るゆうすいも、海水浴や観光であれば「めずらしい光景だな」と感じるだけかもしれないが、その成り立ちを知ると、鳥海山のようがんが水をみやすいこと、流れ出たようがんの上でひとびとが生きていることやそのおんけいを受けていることがかいできる。

ジオパークにはこうした場所がたくさんあり、ジオツーリズムなどによっておとずれる人にこうした体験をていきょうしている。

ジオパーク活動をささえるジオガイド

鳥海山・飛島ジオパークの活動の中で、最も力を入れているジオツーリズム。その案内人であるジオガイドのやくわりは大きい。2015年からかいさいしているジオガイド養成こうにんていされたジオガイドはげんざい50名ほど。さんがくガイドや教員、会社員、しゅなど多様なけいれきの持ち主がそろう。

ジオガイドは、それぞれのけいれきを生かしながら、この地形はどうやってできたのか、ここにはなぜこの生き物が生息しているのかなど、せんもん的なないようを分かりやすく伝える工夫をらしている。参加したいきの子どもたちにとって、身近な自然を地球科学の観点からあらためて見つめる直すきっかけになっているという。

ジオガイド養成講座の様子
ジオガイド養成こうの様子
出前授業の様子
出前 じゅぎょうの様子

ジオパークは新しいつながりをつくる

鳥海山・飛島ジオパークでは、じゅんだんかいからアクションコピー「Touchタッチ! ふれる・楽しむ・好きになる」をかかげている。「じっさいにジオサイトを訪れ、五感を通して地球を感じながら、楽しく自然と人のつながりについて学ぶことができれば、おのずといきを好きになってくれるはずだと考えています。いきのファンがえれば、その中から、ふたたびこの地域をおとずれる人や、活動にかかわる人が生まれてにぎやかになっていくでしょう。また、人が動くことでいきけいざいかっせい化も期待できます」(岸本さん)

さらに岸本さんは続ける。「わたしは、ジオパークは『新しいつながり』をつくる活動だと考えています。かつて、人の生活は大地や自然とともにありましたが、げんざいは人のらし方が変わりました。ジオパークによって人の自然に対する見方が変われば、新しいつきあい方ができるのではないでしょうか。また活動は、ジオツーリズムなどに集う人同士で新たな交流が生まれるなど、人と人とをつなげるものでもあります。そのつながりの中で、おうえんしてくれる人や参加してくれる人がえていけば、このいきはもっと元気になっていくでしょう」

ジオパークにんていにより、そこにある自然が地球科学の観点からのあるものとして見直された鳥海山・飛島エリア。「これからも地道にジオパーク活動に取り組み、よりりょく的なジオパークへ高めていくことで、鳥海山・飛島エリア全体のいきづくりにこうけんしていきたいですね」(岸本さん)

海岸清掃活動の様子
海岸 せいそう活動の様子

ちょうかいさんとびしまジオパークとらす

鳥海山・飛島ジオパークがにんていされ、いき人々ひとびとらしにはどのような変化があったのだろう。
鳥海山・飛島エリアでらす2名の活動家に話を聞いた。

取材先: 五十嵐和一さん (いがらし・かずひと) 
取材先:
五十嵐和一さん (いがらし・かずひと)
鳥海山・飛島ジオパークジオガイド。小学校で理科を教えていた経験を生かし、小中学校や自治会などでの出前授業も行う。
ぞうていきょう/鳥海山・飛島ジオパークすいしん協議会)

わたしはジオガイドとして、鳥海山・飛島ジオパークをおとずれたひとびとに、ジオサイトを案内しながら、その成り立ちや動植物・人間とのかかわりなどを説明しています。ないようによっては、言葉だけで伝えることがむずかしいため、けいや化石など目に見えるものをじゅんしたり、たきの高さを「おおよそ国会議事堂くらいの高さ」とたとえてみるなどの工夫をしています。また、安全第一のため、コースの下見や救急用品などのじゅんてっていしています。

小学校で教えていたころに、しょくせんぱいから鳥海山や飛島のことを教わったこともあり、その面白さや素晴すばらしさをいきの子どもたちに伝えたいと思い、ジオガイドを目指しました。ジオパークとなってから約2年がたちますが、初めは「ジオパークって何?」と思われていたいきひとびとにも、「ジオパークって面白そう」と思ってもらえるようになったと感じています。さらに「自分たちが見ているこの風景は、長い間の地球のいとなみによるもので、そのめぐみでおいしい食べ物がとれる素晴すばらしい場所に住んでいるんだ」というほこりを持ってもらえるよう、活動を続けていきたいと思っています。

⑩幅広い年代の参加者に説明するため、小学校高学年に伝わる言葉遣いを心がけている。
幅広い年代の参加者に説明するため、小学校高学年に伝わる言葉遣いを心がけている。
⑪砂浜の砂を実物で見せながら説明するなど、五感を使って理解してもらえる工夫をしている。
砂浜の砂を実物で見せながら説明するなど、五感を使って理解してもらえる工夫をしている。
取材先:松本友哉さん(まつもと・ともや)
取材先:
松本友哉さん(まつもと・ともや)
合同会社とびしま副代表。2012年4月より飛島で暮らし、2013年3月に合同会社とびしまを設立。事業の統括・企画・デザインなどに携わる。
ぞうていきょう/合同会社とびしま)

合同会社とびしまは、こうれい化の進む飛島の産業のにない手となるべく、漁業の手伝いから食品加工、カフェや土産物店のうんえいなどをそうごう的に手がけ、6次産業化を目指しています。さらに、どくがいねんとして「第0次産業」をかかげ、産業になる前の「風景のぞんでんしょう」に取り組んでいます。その一つとして、島のらしを写真や聞き書きで記録しててんする活動などを行なっています。今は20代〜30代の社員10名の小さな会社ですが、島の人口が今の200人から100人になると予想される20年後までに、100人の仲間をやすことを目標としています。

大学でデザインを学んだわたしは、いきかつやくするデザイナーを目指し、2012年に飛島へじゅうしました。1年後、同じ世代できょうじゅうした3人と会社をせつりつし、今にいたります。島の特産品のパッケージデザインなどを手がけてきましたが、島のらしの中で、大切なのは外側のそうしょくではなく中身のしつではないかと考え方が変わりました。飛島にはほこるべき産業や風景がたくさんあります。鳥海山・飛島ジオパークのにんていは、そのりょくを新しいてんで気づかせてくれるきっかけとなりました。

⑫会社の1階スペースにある「地域資料館」。島で撮影した写真などを展示している。
会社の1階スペースにある「地域資料館」。島で撮影した写真などを展示している。
⑬運営するカフェスペース「しまかへ」。観光客に地域食材を使った料理を提供している。
運営するカフェスペース「しまかへ」。観光客に地域食材を使った料理を提供している。

※6次産業:生産(1次産業)、加工(2次産業)、流通・販売はんばい(3次産業)まで総合そうごう的に取り組み、いきげんの新たな活用を目指すこと

ぞうていきょう/①〜⑨鳥海山・飛島ジオパーク推進すいしん協議会、⑩⑪五十嵐和一、⑫⑬合同会社とびしま

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