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2018年 夏号 (7-9月)

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[乗りものが変わる、未来を変える]

エルアールティーで 今 変わりつつある 街と交通

LRTで 今 変わりつつある 街と交通
自動車にぞんしたじゅうらいの交通システム(左)、LRTをじくにした次世代の交通システム(右)

2000年代に入り、新たな公共交通としてさまざまな都市で導入どう にゅうされ始めた「LRT」。
Lightライト Railレール Transitトランジット」のりゃくで次世代型路面電車システムのことだ。
車両が低く乗降じょう こう容易よう いにできることや、道路上を走る自動車とはことなり、
軌道き どう上を走るため定時運行が可能か のうなことなど、さまざまな利点を持つという。
そのLRTの導入どう にゅうは「まちづくり」にどのような変化をもたらしたのか?
都市交通計画の専門せん もん家である太田勝敏おお た かつ としさんに国内外の事例について聞いた。


公共交通の大きなやくわりは、どうしゅだんかくです。すべての市民は、らしていくうえで一定のどうしゅだんが必要です。自動車が広くきゅうして多くの人が自家用車でどうできるようになりましたが、子どもやこうれい者、身体に不自由のある人など、自動車の利用がむずかしい人々もたくさんいます。

また、自動車の利用が集中する都市部では、つうきん時間になるとしんこくじゅうたいが生じています。加えて、自動車のはいしゅつガスによってちっさん物(NエヌOオーxエックス)やりゅうじょうぶっしつPピーMエムxエックス)といった大気せんぶっしつぞう、そしてさんたんCシーOオーツーはいしゅつによるおんだん化問題がしんこく化しています。

その点、大量そうのうで時間通りに運行するLRTは自動車へのぞんによって起きるじゅうたいかんや、かんきょうへのえいきょうを少なくすることができる交通しゅだんの一つです。また、LRTは都市のほこり、シンボルにもなります。車両や駅のデザインがまちみを形成し、街の文化的なが向上するからです。

LRT はこのようにさまざまな利点をそなえた公共交通システムであり、さらに街の長期的な都市計画の中でせいされるため、持続的に運用されるインフラとしての安心感があります。

もちろん、LRTは自動車ぞん社会がかかえるさまざまな課題のかいぜんこうけんする次世代の交通しゅだんの一つにすぎません。ほかにもBビーRアールTティーBusバス Rapidラピッド Transitトランジット:バス高速そうシステム)なども注目されています。それぞれの街における交通の課題におうじて、「まちづくり」と一体化した公共交通のせいが必要なのです。


「まちづくり」に向ける市民の高いしきが最良のじっあんみちび
フランス ストラスブール

LRTで 今 変わりつつある 街と交通
ストラスブールの市内を走るLRT(ガリア駅にて)

フランス北東部に位置し、ドイツとのこっきょうせっするストラスブールは、
交通のかなめとして栄えてきた。1988年にはきゅう市街地の文化的ひょうされ、
ユネスコ世界文化さんに登録された都市だが、都心部では自動車のじゅうたいしんこくな問題になっていた。
その問題をかいけつするためにどうにゅうされたのがLエルRアールTティーだ。
せん的なLRTどうにゅうの成功事例のはいけいには、市民とぎょうせいによるてっていしたろんがあった。


ストラスブールでは都心部での自動車のじゅうたいが問題となっていました。それをかいけつするための公共交通のせいけんとうされ、1989年にしゅうにんしたトロットマン市長は、こうがいに住む労働者がしょくのある都心まで時間通りにアクセスする交通しゅだんとして、LRTのどうにゅうを考えました。こうがいの主要駅に十分なちゅうしゃ場を用意すれば、そこからLRTにえて都心部へ行くことができます。車からLRTへ交通しゅだんてんかんを図ることは、大気せんそうおんなどかんきょう問題のかいぜんにもつながります。

フランスは、市民との対話を通じてぎょうせいとうめい化を図るというしきが高い国です。ぎょうせいせんもん家として計画案を市民にていし、計画の意味をきちんと伝えます。市民は自らの意見をぎょうせいに伝え、ぎょうせいはその意見を計画にはんえいさせます。こうしたプロセスが、せいとしてかくりつされています。

また、どうするけんや交通しゅだんせんたくの自由といった「交通けん」をかくすることが求められており、公共交通はぎょうせいによる公共サービスと位置付けられ、それに関連する法せいが整えられています。

LRT どうにゅうさいしても決定だんかいまでにぎょうせいと市民によるてってい的なろんが行われました。ストラスブールの人口は約27万人ですが、33の自治体によって形成された都市けんそう人口約50万人)全体での交通マスタープラン(都市計画道路や公共交通などのしょうらい計画をもとにした交通さくのプラン)を作成し、まずはそうごう的な計画を決定しました。その後、路線が通る自治体ごとにしょうさいな路線や駅の位置などべつろんをしました。

都市のマスタープランから路線エリアの計画までのだんかいごとに、ろんのテーマも関係する人もことなります。それぞれのだんかいで、ぎょうせいていした計画のないようを市民が参加してめるのです。

ろんちゅうではさまざまな新じゅつや他のエリアの好事例も登場します。最新動向をちゅうしつつ、最良のじっ案を練り上げていきました。利用者でありのうぜい者でもある市民とぎょうせいとがてってい的にろんを交わし、共に自動車交通のだいたい案としてのLRTせい案を作成し、どうにゅういたったのです。

ストラスブールでは、LRTせいによってこうがいと都心を直結するどうしゅだんかくされるとともに、都心でのじゅうたいと大気せんかいぜんされました。さらにLRTどうにゅうによる歩行者中心の街と文化的景観は世界的にみとめられ、フランス有数の観光地としてにぎわっています。


そんの鉄道をリニューアルし、市民のライフスタイルを変える
やま

富山市周辺の鉄道路線図
富山とやま市周辺の鉄道路線図

日本で初めてほんかく的にLエルRアールTティーどうにゅうしたのはやま市(人口約42万人)だ。
そのはいけいには、人口げんしょうこうれい化の課題にたいおうする
「公共交通をじくとしたコンパクトなまちづくり」を進める必要があった。
公共せつしょくを公共交通でつなぎ、その主要駅をきょてんにした
きょじゅうエリアを形成する「まちづくり」は、かくじつに成果を生み出している。


かつてやま駅と日本海に面したいわはま駅の区間は、JジェイRアールやまこうせんが運行されていました。やま市では、しんかんせんせいを機に赤字路線だったやまこうせんをリニューアルしてLRTをどうにゅう。2006年4月に全長約7.6kmキロメートルやまライトレールやまこうせんあいしょう:ポートラム)が開業しました。日本初のLRTのほんかくどうにゅうとして、大きな話題をびました。

やまライトレールの利用者はJR時代とくらべ、平日で約2.1倍、休日で約3.6倍もえました。特に日中にLRTを利用するこうれい者がぞうし、これまで出歩くことが少なかったこうれい者に外出の機会をあたえています。また、交通しゅだんを自動車からLRTに代えた利用者もえ、かんきょうへの負荷がていげんしました。沿えんせんでのじゅうたく着工けんすうも市内全体にくらべて高く、LRTをじくとした「まちづくり」がそくしんされています。沿えんせんにスーパーマーケットが開業するなど、住民の利便せいも高まりました。

さらに2009年、やま駅南側を走る市内電車(やま地方鉄道やまどうせん)のどうを約0.9kmばし、東西の2路線をせつぞくすることで1周約3.4kmのかんじょう線(あいしょう:セントラム)がじつげんしました。すでにせいの成果は表れています。かんじょう線の利用者が中心市街地で消費するへいきんがくは、自動車で街に来る人々よりも高いという消費行動が明らかになっています。

げんざいは、やま駅南側の市内電車と駅北側のやまライトレールをやま駅でせつぞくする事業も進められており、やま駅の南北回遊せいが大きくかいぜんされることがまれています。

南側のエリアでは、せつぞく工事に向けたせいがすでにかんりょうし、市内電車によるやま駅へのアクセスが向上した結果、つうきん定期利用が約13%、通学定期利用が約7%それぞれぞうするなど、早くも成果が生まれています。また、やまこくさい会議場で会議がかいさいされたけんすうやまきょう博物館の入館者数は、ともにせい前の約1.5 倍とおおはばぞうしています。

LRTのせいじくに、さまざまなさくとの組み合わせでコンパクトな「まちづくり」を図ってきたやま市は、市民のライフスタイルを着実に変化させながら、コンパクトシティのじつげんを今もすいしんしています。

定時運行だから安心だ 駅とバス停が近くて乗り換えしやすい 段差がなくて楽に乗り降りできる 通院のついでに買い物もしよう
ポートラムの車体のカラーは計7色あり、いずれも富山の豊かな自然を象徴している。
ポートラムのしゃたいのカラーは計7色あり、いずれもやまゆたかな自然をしょうちょうしている。

宇都宮うつのみやしょうらいぞうを共にえがく「きょうそう」の取り組み
宇都宮うつのみや

宇都宮の将来像を共に描く「共創」の取り組み 宇都宮市

やま市をはじめ、これまでLエルRアールTティーどうにゅうしてきた事例は
主にそんどうを活用したものだった。
今、新たなどうせいからLRTのどうにゅうを始めた自治体がある。
とち宇都宮うつのみや市(人口約52万人)だ。
20年間にもおよろんて、ついに工事が始まったが、
そこにいたる道のりには、さまざまなステークホルダーが十分にろんする「じゅく」と、
対話しながら新しいを共につくりあげていく「きょうそう」の取り組みがあった。


宇都宮うつのみや市はJジェイRアール宇都宮うつのみや駅の東側にこうぎょうだんや自動車メーカーの工場が立地しています。つうきん時間帯には、駅とその東側を結ぶかんせん道路が大じゅうたいし、それが長年の問題になっています。市ではじゅうたいかんするとともに、少子こうれい化やかんきょう悪化などの問題にたいおうするために、大量そうのうなLRTをどうにゅうし、それをバスなどそんの公共交通にんでさいへんするというコンパクトシティのこうそうを1997年に打ち出しました。その後約20年にもおよろんて、2018年6月にLRTのせい工事(東部区間、約15kmキロメートル)がスタート。開業は2022年3月の予定です。

宇都宮うつのみや市でのLRT どうにゅうすいしんでは、さまざまなステークホルダー(利害関係者)がしょうらいの都市ぞうを共有し、活発なろんを通じてさいぜんの方法をみちびく「じゅく」と「きょうそう」の取り組みが重要なやくわりを果たしています。

ステークホルダーはにわたります。市民、自治体の都市計画や交通をたんとうするしょ、計画に意見を持つ市民だんたい、バス会社などそんの交通事業者、産業界の代表である商工会議所、しょかつかんちょうの国土交通省やけいさつちょうなどです。さらに、せんもん的な知見をていきょうする第三者のせんもん委員会、そして客観的にろんできる科学的な知見やデータをていきょうする地元の宇都宮うつのみやだいがくの参画も欠かせません。

ぎょうせいしゅどうの公式な会議だけでなく、数多くかいさいされた説明会、ワークショップ、オープンハウスなどでこういったステークホルダーがろんし、利害関係を調整する場面がもうけられることで、LRT どうにゅう計画のじつげんに向けて進んでいるのです。ぎょうせいていあんする計画の方向せいを、共に学びながらより良くしていくことが宇都宮うつのみや市でのきょうそうといえるでしょう。

多様なステークホルダーによるきょうそうて、いよいよどうにゅうされるLRTによって変わりゆく宇都宮うつのみやの街に注目していきましょう。

宇都宮うつのみや市公式ウェブサイトに、事業のしんちょくなどのじょうほうけいさいされています

宇都宮市の東西を結ぶ交通のイメージ
宇都宮うつのみや市の東西を結ぶ交通のイメージ

げんだい社会がかかえる交通問題の大きなよういんの一つは自動車へのぞんです。自動車をかしこく使いつつ自動車ぞん社会のさまざまな課題をかいぜんするためには、自動車のだいたいしゅだんとして公共交通を選べるようにせいすることが重要です。

LRTは交通問題のかいけつみちびく公共交通システムの一つのせんたくとして、各地でそのどうにゅうが進められています。しかし、単に公共交通をどうにゅうするだけでは、交通問題の根本的なかいけつにはなりません。その都市がかかえる交通問題のかいけつてきした公共交通について、市民をはじめさまざまなステークホルダーがしんけんろんし、共に学び合い、すべての市民にとって利便せいが高く、安全でかいてきな都市を「きょうそう」する取り組みが重要となります。

注釈なし画像

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