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2018 夏号 (7-9月)

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[乗りものが変わる、未来を変える]

乗りものの歴史

ライト兄弟のフライヤー号
ライト兄弟のフライヤー号

人の歴史は、どうの歴史と言ってもごんではない。
自分の足でどうするほかなかった人は
やがて「乗りもの」を手に入れ、
どんどん遠くを目指した。
陸、海、空、そしてちゅうへ。
乗りものの歴史をひもいて、
人々の生活や社会がどのようにはってんしてきたのかを
かえってみよう。

ボーイング707
ボーイング707
ベンツ ヴェロ
ベンツ ヴェロ
古代エジプトの船
古代エジプトの船

動物や自然の力を利用することで「乗りもの」の歴史は始まった

自動車、電車、船に飛行機。人は多くの乗りものを使って、世界のどこへでもばやどうすることができる。だが、人は最初から「乗りもの」を持ってはいなかった。人の長い歴史の中で、乗りものがたんじょうするのは、「最近の話」なのだという。

げんざい記録が残っている古い乗りものの一つに、紀元前1万年ころの船の原型となるものが知られている。丸太や木のえだを束ねただけのかんな「いかだ」を作り、水にかべて人力でどうして魚をっていたという。風の力を使うのついた船ができるのは、かなり後の紀元前3000年ころとされる。また、陸上では紀元前5000年頃から荷物を運ぶ方法として、ロバなどの動物が使われるようになっていた。

エジプトの船(紀元前2010-1961)エジプト王朝の王の墓から出土された木製の船の模型。
エジプトの船(紀元前2010-1961)
エジプト王朝の王のはかから出土された木製もくせいの船のけい

紀元前3000年ころになると、人は馬に乗り始める。人力から動物へ。人が歩いてどうする速さをはるかにえる馬に乗ることで、それまでとは比べものにならないほど速く、より遠くへどうすることができるようになった。さらに時代が進むと街道をそうなどでせいして、馬やロバなどが引く車輪付き車などを使うようになる。こうして乗りものを使ったどうの歴史は始まった。

車馬坑(紀元前1350-1046)貴人の墓に副葬されていた車馬。中国河南省安陽市にある遺跡で発見された。
しゃこう(紀元前1350-1046)
きじんはかふくそうされていた車馬。中国なんあんよう市にあるせきで発見された。
アッピア街道(紀元前1350-1046)イタリア・ローマと南イタリアを結ぶ舗装路で、紀元前244年当時の全長は375kmもあったとされる。
アッピア街道(紀元前312-)
イタリア・ローマと南イタリアを結ぶそう路で、紀元前244年当時の全長は375kmキロメートルもあったとされる。

ヌマジ交通ミュージアム(広島県)で鉄道文化を中心に研究をする田辺あらしさんは、乗りものがはってんしてきた歴史についてこう話す。「古代からげんだいまで乗りものは大きく進歩しましたが、人が乗りものに求めてきたものはずっと変わりません。『より速く、より遠くへ、よりたくさん運ぶ』。乗りものが進歩することで、それまでに行ったことがないところに行き、見たことがないものを見て、ことなる文化にれられるようになりました。そのようにして乗りものは、人の生活や文化のはってんに大きくしてきたのです」

自然や動物の力にたよる時代

年表

紀元前10000以前

自分の足で移動い どう
唯一ゆいいつ移動いどう手段しゅだんは足。重い荷物もかつぐか引きずった。


紀元前10000ころ

いかだや丸太が登場
木を束ねたいかだや丸太にまたがったり、荷物をせて水上を移動いどう


紀元前7000ころ

木をくりぬいたまるぶね
半分にった木の中をくりぬいた丸木舟まる き ぶねが作られる。


紀元前5000ころ

ソリで荷物を運ぶ
動物の皮や木製もくせいのソリが登場。動物に荷物を運ばせることも。


紀元前3500ころ

車輪付き車を発明
ロバなどの動物が引いていた。


紀元前3000ころ

交通手段しゅだんとしての馬
乗馬により交通は発展はってん。数々の馬具も発明。


帆走はんそう船で水上へ
風の力を利用して川上へも進めることを発見。


紀元前1000ころ

交易船で世界へ
さらに大きく、遠くまで行ける軍艦ぐんかん交易こうえき船へと発展はってん

じょう機関の発明からガソリンエンジンへ、乗りものの進化は加速する

動物や風など自然の力を利用していたそれまでの乗りものを大きく変えたのは、「蒸気機関」の発明だった。ボイラーで発生させたすいじょうを動力げんとするじょう機関車は、登場した1800年代始めころは速さこそ時速13kmキロメートル ていおそかったが、馬車とはくらべものにならないほど多くの荷物や旅客を運ぶことができた。じょう機関は、同じくはってんじょうにあった土木じゅつも大きく発達させ、鉄道や道路がかくちょうされていった。

たんこうじゅつとして開発されたじょう機関は、強いあつりょくえられる鉄を作るじゅつせっけいじゅつの向上により、ボイラーの小型化、パワーアップをじつげんしました。そうして進化したボイラーを機関車にとうさいし、じょう機関車がたんじょうしたのです。乗りものがはってんしたおかげで遠くまでげんを大量に運べるようになり、さまざまな材料を使った新しいじゅつせいひんつくられるようになりました。そうしたじゅつがまた次の乗りものに生かされるというように、産業かくめいこう、科学じゅつと乗りものはたがいにはってんし合ってきました」(田辺さん)

日本初の国産蒸気機関車(1893)イギリス人技術者の指導を受けながら造られた860形。
日本初の国産じょう機関車(1893)
イギリス人じゅつ者のどうを受けながらつくられた860形。

ガソリンエンジンで走る車がたんじょうしたのは1800年代後半だ。駅から駅へ、決められた時間に発車する機関車に乗ってどうするのとはことなり、自動車ならば好きな時に好きな場所へ行くことができる。工業じゅつの発展は“大量生産”をのうにし、人々が自家用車を所有することはゆめではなくなった。

ベンツ ヴェロ(1894)ドイツ・ベンツ社初の四輪車ヴィクトリアの小型車。(画像提供:トヨタ博物館)
ベンツ ヴェロ(1894)
ドイツ・ベンツ社初の四輪車ヴィクトリアの小型車。(ぞうていきょう:トヨタ博物館)

さらにエンジンのじゅつが高まり小型軽量化したことで、それまでの人類はそうぞうもしなかったであろう空の旅がげんじつのものになった。

ライト兄弟のフライヤー号(1903)アメリカ・ノースカロライナ州で有人動力飛行に成功。初飛行で約37mを飛んだ。
ライト兄弟のフライヤー号(1903)
アメリカ・ノースカロライナ州で有人動力飛行に成功。初飛行で約37mメートルを飛んだ。

発明とじゅつかくしんの時代

年表

1769

世界初の 蒸気じょう き自動車
フランスのキュニョーが蒸気じょう きで走る三輪自動車を開発。


1783

熱気球が飛行
フランスのモンゴルフィエ兄弟発明の有人熱気球がパリ上空を9kmキロメートル飛行した。


1783

蒸気じょう き船を発明
フランスのジュフロワが蒸気じょう き機関でスクリューを回す蒸気じょう き船を発明。


1802

蒸気じょう き機関車が誕生たんじょう
イギリスのトレビシックが世界初の蒸気じょう き機関車を開発。


1818

自転車を発明
ドイツのドライスが自転車(ドライジーネ)を発明。ペダルはなく地面をって進んだ。


1886

ガソリンエンジン車を開発
ドイツのダイムラーとベンツが、それぞれガソリン自動車を開発。


1903

フライヤー号初飛行
アメリカでライト兄弟による有人初飛行が成功。


1908

Tティー型フォードが発売
世界で初めて大量生産によるT型フォードがアメリカで発売された。

「より速く、より遠くへ、よりたくさん運ぶ」から、かんきょうや社会にやさしい未来の乗りものへ

20 世紀半ばこうになると、ジェットエンジンをとうさいした大型旅客機など、高速で大型の乗り物が次々と開発され、多くの人がより大きなどうをすることがのうになった。そして1960年代には、人はちゅうにも行けるようになった。今では、火星への有人たん計画が進むなど、人のちゅう進出が続いている。

ボーイング707(1957-1991)大型ジェット旅客機の先駆的存在で、1991年まで1000機以上が生産され、世界各国の航空会社、軍などに採用された。
ボーイング707(1957-1991)
大型ジェット旅客機のさきけ的存在そんざいで、1991年まで1000機以上が生産され、世界各国の航空会社、軍などに採用さいようされた。
新幹線0系(1964-2008)当時の国鉄が東海道新幹線のために開発した高速鉄道車両。世界で初めて時速200kmを超える営業運転を実現した。
新幹線しんかんせん0系(1964-2008)
当時の国鉄が東海道とうかいどう新幹線しんかんせんのために開発した高速鉄道車両。世界で初めて時速200kmキロメートルえるえいぎょう運転を実現じつげんした。
スペースシャトル(1981) NASAが打ち上げたスペースシャトル。1981年から2011年の間に135回打ち上げられた。
スペースシャトル(1981)
NASAナサが打ち上げたスペースシャトル。1981年から2011年の間に135回打ち上げられた。

こうして、「乗りもの」は多くの人々が自由にどうできる社会をつくったが、同時に、かんきょう問題やエネルギー問題、安全せいの問題など社会課題ももたらした。乗りものは「速く、遠くへ、たくさん運ぶ」だけでは成り立たなくなった。

げんざい、電気自動車やすいエンジンなど、化石ねんりょうたよらない乗りものの開発が進んでいる。また、人工のう(AIエーアイ)や通信じゅつを活用した自動運転じゅつが、近年大きな話題となっている。近未来の乗りものはどうなっていくのだろうか。ヌマジ交通ミュージアムの田辺さんは「これまでの歴史を通じて乗りものが多様化したように、人々の生活や望むものも多様化してきました。これからは、もっと一人ひとりの気持ちにうような乗りものがえていくのではないでしょうか。そうして社会全体が豊かになっていけばいいなと思っています」と話す。

トヨタ プリウス(1997)
ガソリンエンジンと電気モーターで走る世界初の量産ハイブリッド乗用車として誕生たんじょう。(ぞう提供ていきょう:トヨタ博物館)

長い歴史の中で、科学じゅつとともに発展してきた乗りものは、今もさらに進歩している。この後のページで取り上げる「次世代型路面電車システム(LRTエルアールティ)」や自動運転じゅつなど、今後は身近なところで人々のらしをゆたかにしたり、バリアフリーをすいしんする乗りものがえていくことだろう。未来はどんな乗りものが登場し、それによって人々の生活や社会はどう変わっていくのか。未来を変えようとしている、新しい乗りものを見ていこう。

高速そう時代
ちゅうどうけんない

年表

1955

原子力 潜水艦せん すい かんが初運転
アメリカ海軍のノーチラス号が世界初の原子力潜水艦せん すい かん


1957

人工 衛星えいせいを打ち上げ
ロシア(当時はソ連)が世界初の人工衛星えいせいスプートニク1号を打ち上げ。


1960

深海 潜水艇せんすいていが深海へ

スイスで設計された、深海潜水艇せんすいていトリエステ号がマリアナ海溝かいこうで深度11kmに到達とうたつ


1961

世界初の有人 宇宙う ちゅう飛行
ロシア(当時はソ連)のボストーク1号打ち上げ。ガガーリンが世界初の宇宙うちゅう飛行士となった。


1964

東海道とうかいどう新幹線しんかんせん開業
東京と新大阪しんおおさか間を結ぶ東海道とう かい どう新幹線しんかんせんが開業。


1969

アポロ11号月面着陸
アメリカのアポロ計画により、人類が初めて月面にった。


1970

ジャンボジェット機運航
アメリカ・ボーイング社が開発した、世界最大の旅客機ボーイング747が運航を開始した。

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