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2018 春号 (4-6月)

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[自然の豊かさって何だろう?]

遊んで学ぶ自然と多様性

自然への好奇心や生き物に対する驚きは、机上で学ぶだけでなく、直接触れ合ってこそ感じることができる。
自然の中で遊びながら学べるネイチャーゲームについて、日本シェアリングネイチャー協会常務理事の井上満さんに教わった。


ネイチャーゲームで遊ぶと、自然の中のいろいろなもの、互いのつながり合いに気づき、実感することができます。

楽しみながら「気づき」を得る

ネイチャーゲームとは、1979年に米国の自然愛好家が発表し、世界に広まった自然体験活動のこと。自然の中はもちろん、学校の校庭や公園でもできる。特別な知識がなくても、自然の持つさまざまな表情を楽しめるよう工夫されたゲームが多数あり、環境教育などでも注目を集めている。

井上満さんは長年、小学校教諭として子どもたちと接し、ネイチャーゲームの指導にも取り組んできた。ネイチャーゲームを通じて、「地球上では人間が偉い生き物のような気がしているけれど、そうではなくて、私たちもみんな自然の中で生かされているのだとつくづく感じるようになった」と語る。さまざまな生物にはそれぞれ役割があって、草が生えなければ草食動物は生きていけないし、草食動物がいなければ肉食動物は生きられないといった当たり前のことも、日常の生活の中で、肌で感じるような機会はほとんどない。ネイチャーゲームを実施することで、そうした自然の姿に触れ、興味を抱くきっかけを生み出すことができる。

今回は数あるネイチャーゲームの中でも、「生物多様性」という観点から、その気づきや学習につながるものを井上さんに6種選んでもらった。

「ネイチャーゲームにはそれぞれ『植物の生存戦略を知る』だとか『生態への関心を引き出す』といった狙いがあります。でも、狙いを意図するあまり、楽しむことを忘れてはいけません。まずは子どもたちの反応をよく見ましょう」と語る井上さん。

ゲーム終了後、各参加者の気づきを分かち合う時間を持つことも有効だ。ゲームから得る気づきには個人差があるが、それを共有することで学びに相乗効果が生まれる。

「ただし、言葉にするのが苦手な子もいます。分かち合いを強制したために、ゲームそのものを純粋に楽しめなくなってもいけない。あくまでも、付加価値として捉え、状況を見て行ってください」と井上さん。指導者もまず子どもたちの反応をよく観察することが、ネイチャーゲームの鍵となる。

ネイチャーゲームのルールより目の前の子どもたちを大切に

ネイチャーゲームを通じて、子どもたちが自然に親しみ、触れ合っていく上で、大切なのが指導者の心構えだという。

「指導者を養成するとき、ゲーム屋にはなるなと注意することがあります。ネイチャーゲームを実施すること、学ばせることに気を取られず、目の前にいる子どもの存在をまず大事に考えてほしいのです」

例えば現代では、虫が嫌いな子、土に触れたくないという子も珍しくない。そうした場合に、ルールだからと無理にやらせたり、教え込んだりしようとするのではなく、子どもの発言に耳を傾け、ちょっとした表情の変化などから、機会をうかがうように努めるという。

「あるいはやり方の説明をしているときに鳥の鳴き声が聞こえたら、説明をやめ、みんなで聴いてみる。自然から学ぶには、そうした突然やってくるチャンスにも心を開いていることが大切だと思います」と井上さんは補足する。ネイチャーゲームは自然を楽しむ手段に過ぎず、主役はあくまでも自然そのものと参加者であるという姿勢の徹底が感じられる。

今回紹介したネイチャーゲームも、ルールは実施対象の年齢や環境によって、臨機応変に変えてほしいと井上さんは説明する。無理せずに楽しめば、結果として、自然への興味や理解を深めることができるからだ。形や規則ばかりにとらわれず、まずはやってみて、状況を確かめながら、精いっぱい楽しむこと。それが、自然の多様性と人の多様性を共に尊重し学ぶ姿勢につながっていくのである。

指導者の心構えについて語る井上さん。自然に対してだけでなく、参加者の反応や考えの違いを尊重することが、ネイチャーゲーム体験の質を高める。
指導者の心構えについて語る井上さん。自然に対してだけでなく、参加者の反応や考えの違いを尊重することが、ネイチャーゲーム体験の質を高める。

食物連鎖を体験する
コウモリとガ

15人程度/目隠し用バンダナ

●コウモリ役1人、ガ役2~3人を決める。
●残りの人は両手を広げて輪になり、壁役を務める。
●コウモリは目隠しをして輪の中のガを追いかけ、タッチして捕まえる。
●コウモリが「バット」と声を出したら、ガは必ず「モス」と答える。
●コウモリが壁にぶつかりそうになったら、壁役は「カベ」と声を出す。
●捕まったガは壁役に加わり、コウモリが全てのガを捕まえれば終了。(役を替えて繰り返す)

ルールは鬼ごっこと似ていて分かりやすい。コウモリはエサを捕まえないと生きていけず、エサとなるガは捕まれば命が終わるという話をした上で、食う・食われるという自然界の日常を体験できる。目が見えないコウモリの動きはにぶいが、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされる。ガが逃げられる範囲も狭いため、緊張感がある。

壁役が手をつなぐと接触時に危険なので、手はつながないように。
壁役が手をつなぐと接触時に危険なので、手はつながないように。
壁役が手をつなぐと接触時に危険なので、手はつながないように。
壁役が手をつなぐと接触時に危険なので、手はつながないように。

植物の生存戦略に気づく
ごちそうはどこだ

3チーム(10~30人)/ドングリ、活動領域を区切るロープなど

●3本の木をそれぞれロープなどで囲い、各チームのエリアを決める。
●各自1~2個のドングリを自分のチームのエリアに埋める。(埋めずに隠すだけでもOK)
●別のチームのエリアへ行き、埋められたドングリを探し出す。
●自分たちが埋めたドングリを掘り起こし、チームで見つけた全てのドングリの数を数える。
●全チームのドングリを集め、合計数を確認する。

最後にドングリを数えると、掘り忘れなどがあり、最初の個数よりも少なくなっている。その忘れられたドングリが今後どうなるのかを想像させる。実際にリスなどがエサとして貯蔵し、掘り出されず残ったドングリが芽を出し、育つ場合があることを説明。自分で動けない植物たちが、繁殖のためさまざまな工夫をしていることに気づかせる。

おのおのが埋めたドングリの場所が分からなくならないように目印をつけてもよい。
おのおのが埋めたドングリの場所が分からなくならないように目印をつけてもよい。
おのおのが埋めたドングリの場所が分からなくならないように目印をつけてもよい。

生態への関心・疑問を次々に引き出す
動物カテゴリー

人数自由/動物カード(手作りも可)

●1枚に1種類、動物の絵や名前を記したカードを用意する。
●その動物カードを元に、出題者はあらかじめ共通点を決め、使うカードを決めておく。
●出題者が動物カードを1枚ずつ出し、参加者に順に見せていく。
●出てくるカードの動物には、出題者が決めた共通点があるので、参加者はそれを推理して当てる。

室内で遊べるクイズ形式のネイチャーゲーム。回答者は、出題者が考えたカテゴリー(哺乳類、草食動物、2本足で歩くなど)を推理して当てる。協会が販売しているカードもあるが、手作りのカードでも遊べる。回答を通じ、さまざまな動物を比較して捉えたり、知識を確認したりすることで、生き物への関心を高める。

共通点の例
協会が販売しているカードは、リアルな絵の裏に生態などを解説している。
協会が販売しているカードは、リアルな絵の裏に生態などを解説している。

動物カードでもう1ゲーム
動物交差点

人数自由/動物カード(手作りも可)

背中に動物カードを洗濯バサミで留め、自分が何の動物なのかを当てる。「私の足は何本?」などと他の人に教えてもらい、その正体を推理したら指導者に伝えて確認する。時にはリスを「足は2本」と答えるなどのミスリードも起こるので、正解にたどり着けない場合は指導者が整理する。

「観察する目」が自然と育まれる
ジャンケン落ち葉集め

人数は自由/集めた落ち葉を並べる布やシート

●近くの人とジャンケンする。勝った人は落ち葉を拾いに行き、負けた人は別の人とまたジャンケンする。
●落ち葉を拾ったら、また近くの人とジャンケンする。これを繰り返す。
●勝つたびに違う種類の落ち葉を探して集める。
●最後に全員の落ち葉を種類ごとに並べ、それぞれの葉っぱの特徴について話し合う。

ポイントは、葉の種類について専門的な同定などは行わず、子どもたちの話し合いだけで決めること。落ち葉を集める段階では、自分なりに違う種類だと判断した葉っぱが、話し合ってみると、大きさや色、手触りなどが違っても同じ種類であることなどに気づき、共通点や違いについて「観察する目」を養うことにつながる。

話し合ってみると、ものの見方や特徴の捉え方も、人によって異なることに気づく。
話し合ってみると、ものの見方や特徴の捉え方も、人によって異なることに気づく。
注釈無し画像
注釈無し画像

身の回りをじっくり観察する体験ができる
カモフラージュ

人数は自由/文房具や家庭用品などの人工物20個程度、ロープ

●10~20mのロープで歩くルートを示し、その付近の自然の中に人工物をセットしておく。
●指導者はセットした人工物の数と場所をメモしておき、参加者には教えない。
●参加者は「話さず」「触らず」「戻らず」のルールに従い、ロープに沿って一人ずつ歩き、人工物を探す。
●見つけた数を指導者に報告し、全てが見つかっていなければ再び探す。
●最後に答え合わせをした後、人工物を回収する。

ナナフシの例など、擬態について説明してからゲーム開始。ハンガーのように目立って分かりやすいもの、草の中に並ぶ緑の鉛筆など分かりにくいものを織り交ぜてセットする。答え合わせ後は、見つけにくかったものの特徴などを話し合い、「色や形が似ている」といった擬態の工夫を学ぶとともに、観察したこと、発見したことを共有する。

豆電球は小さく、ガラスに周囲の色が映り込むため見つけにくい。
豆電球は小さく、ガラスに周囲の色が映り込むため見つけにくい。
透明な定規などは、目の前につるしてあっても素通りしてしまう。
透明な定規などは、目の前につるしてあっても素通りしてしまう。
枯れ葉の上の古びた10円玉は、見事な擬態でほとんど見つけられない。
枯れ葉の上の古びた10円玉は、見事な擬態でほとんど見つけられない。
注釈無し画像

自然の多様さと人の感覚の多様さに気づく
フィールドビンゴ

3人1組(組数は自由)/ビンゴカード

●公園や校庭などの屋外で行う。
●3人1組で、各自1枚ずつビンゴカードを持つ。
●指導者のかけ声で、カードのマス目に書かれたものを探す。例:「チクチクするもの」「いい匂いがするもの」「抜け殻」「卵」など
●発見したものを3人で確認し、全員一致で正解と判断した場合、マス目に○印をつける。
●○印が縦、横、斜め一列に並んだ「ビンゴ」を、協力してたくさん作る。
●合図で集合し、どんなものが見つかったか、見つからなかったものは何か、話し合う。

用意するビンゴカードは配列が違うだけでマス目の内容物は同じもの。カードは、指導者がゲームを行う場所を下見し、探させたいものを書いて作成する方法のほか、参加者にその場で決めさせてもよい。ゲームを通じて、3人全員が同じ判断をするのは意外に難しいことを実感できる。

小学校で実際に使われたビンゴカードの一例。マス目の数や内容は自由に構成して楽しめる。
小学校で実際に使われたビンゴカードの一例。マス目の数や内容は自由に構成して楽しめる。
注釈無し画像

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