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2009年 4月号

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かがくを伝える 本づくりの舞台裏

丸善『理科年表』編集部を訪ねて

丸善『理科年表』編集部
創刊号の復刻版を左手に、「海外から英訳の要望もあります。NASA(アメリカ航空宇宙局)からも絶賛されました」と話す、三井正樹さん(左)。堀内洋平さん(右)は、「聖徳太子のころからの地震のデータも載っていて歴史的な見方ができるし、新聞紙が何℃で自然発火するなど雑学も満載です」と理科だけでない見方をアピール。

大正14年に創刊。科学の全分野のデータを1冊に網羅する、世界的にもユニークなデータブックが『理科年表』だ。
戦争時の3年間を除いて毎年発行。データをアップデートし新陳代謝を続ける。
科学的根拠として使われるため間違いは許されない。東京・日本橋の編集部を訪ねた。

科学の知の集大成
信頼されるデータに使命感

会議室に入ると、机の上に大正14年の創刊号(復刻版)から最新の平成21年版までの理科年表、読本、ウエブ版など100冊近い本がずらり迎えてくれた。

まず創刊号をめくる。序文に「この年表は一般理学の教育、研究及び応用に便するため毎年発行・・・・・・」と記されている。「主に旧帝大の学生の理科の実習や研究の便利帳として作られたんですね」と2002年まで約30年間、編集を手掛けた三井正樹さんが説明してくれた。

創刊時の部門は暦、天文、気象、物理化学、地学。後に生物と環境が加わったが、基本的な構成は当時と変わらない。用語解説はほとんどなく、数字が並ぶ。難しいという声も確かにあるが三井さんは「それが売りです」と胸を張る。「一つひとつ説明していたら科学大事典になってしまう。各分野の最先端の研究者たちが、『今の科学の知の集大成』を誰でも買える値段の書物に凝縮して、後世に残すという気概で作っているのです」

その使命感を受け継ぎ現在、編集を担当するのが堀内洋平さんだ。作業の流れを聞くと、2009年版の場合、2008年春に国立天文台をはじめ各部門の監修者全員が集まって方針を立てる。そこで世界天文年などの新しい情報を入れることが決まる。その後、監修者が総勢100名もの執筆者を選ぶ。夏ごろ、原稿が集まると編集作業が始まる。11月の南極観測船の出航に間に合わせるのが伝統。ギリギリまで作業は続く。2008年10月発表のノーベル賞日本人受賞者の似顔絵も掲載した。

「大変なのは校正作業。1つの間違いも許されない。数字は目で追うだけだと間違えるので読み合わせします」と堀内さん。利用先は教科書や地図帳、また、太陽の高さや月齢などのデータは、科学捜査に使われるなど、多岐にわたる。「信頼の高さが売りだけにプレッシャーは大きい」が、その使命感がやりがいでもある。

一方で、研究現場で使うデータを基準に作られているため、「単位が日常で使うものと違う」「実験の計測方法が教科書と違う」という声が寄せられるのも事実。そこで、『理科年表』の入り口として小学校から中学生を対象にしたジュニア版の『理科年表』を制作中だ。「全面的にイラスト化して読者がすんなり入り込める体裁にしたい」と堀内さんは張り切っている。

「難しそう」と食わず嫌いだったデータもじっくり見て、グラフ化して比べたりすると、読み取る楽しさが見えてくる。夏休みの学習や総合学習で使ってみると、理科の新しい楽しみ方や奥深さに触れることができるのではないだろうか。

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