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2008年 2月号

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天からの手紙 雪の問いかけ

結晶のかたちはどうして決まる?

温度や水蒸気のちょっとした変化によっていろいろな姿になる雪。複雑で美しい形の裏側には、精密な大自然の法則が働いている。


[天からの手紙 雪の問いかけ]イメージ
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[天からの手紙 雪の問いかけ]イメージ
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[天からの手紙 雪の問いかけ]イメージ
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温度によって変わる形

雪の結晶はいったい何種類あるのだろう。雪の結晶は形によって分類できる。しかし、ある形が同じ仲間か違う仲間かと判断するにも、見る人の主観に大きく左右されてしまう。もっとはっきりと分ける方法はないのだろうか。

「雪の結晶ができるときに重要な条件は気温と水蒸気の量です。そして、雪のでき方から見ると結晶の基本は4種類となります」と語るのは、北海道大学低温科学研究所の古川義純ふるかわよしのり教授。

古川教授によると、雪の結晶の基本は六角形で、角板、角柱、針状、樹枝状の4つに分類される。

雪は雲の中で生まれる。雲は非常に細かく冷たい水滴でできていてマイナス40℃くらいまでは凍らない過冷却の状態にある。そこに空気中のチリなどが触れるとそれを核としてすぐに凍り始める。最初は球状の塊だが、やがてすべての雪の結晶の基本形である小さな六角板状となり、そこから気温と水蒸気の量により、さまざまな形へと成長していく。(図1)

    雲内の温度、水蒸気量と雪の結晶の形の関係(図1)    水蒸気が飽和量を上回り過飽和状態にある    水蒸気が飽和量以内で少ない    A. 温度による変化    B. 水蒸気による変化    雪の結晶は六角形で安定する。結晶は水蒸気を外側から吸い込んで成長する。そのため、結晶の近くは水蒸気が少なくなり、より水蒸気の多い結晶より離れた部分から水蒸気を補給しようとする。その結果矢印のように、結晶の一番出っ張った角の部分から水蒸気が取り込まれる。水蒸気が多いとその現象がさらに加速し、角の部分がどんどん成長し突起状になっていく。    横に成長    −10℃〜−20℃では表面は横の面の方が凸凹してくる。そこで、今度は横に広がりながら成長する。    空気中に含むことのできる水蒸気の最大量(飽和量)を示す曲線    縦に成長    −5℃〜−10℃くらいでは、結晶は縦の方向に凸凹してくる。空気中の水蒸気は凸凹した面のほうがくっつきやすいので、この温度では縦の方向に成長していく。    a. 角板    b. 角柱    c. 針状    d. 樹枝状    扇状    コップ状

雪の結晶ができるのはマイナス5℃くらいからだ。マイナス5℃から10℃の間は、まず角柱状の結晶ができ、水蒸気が付着して針状結晶へと成長していく。この温度の領域では、結晶は縦に長く伸びる。そしてマイナス10℃から20℃では、角板結晶が基本の形となり、結晶は横に広がるように成長していく。


水蒸気が生む複雑さ

さらに、おもしろいことに、雪の結晶は必ずしも全体的にまんべんなく大きくなるのではない。大きく成長した結晶は、六角形の角の部分の構造が発達して、針状や樹枝状になっていく。結晶が大きくなるためには水蒸気が必要だ。空気中の水蒸気が少ないときは、角から広がるように水蒸気がついて面全体に均等に結晶が成長する。ところが、水蒸気の量が多くなると、結晶に水蒸気がつくスピードが速くなり、面全体に広がる前に角にドンドンと水蒸気がついて、針状やコップ状、扇状、樹枝状など複雑な結晶になっていく。

地上にたどり着くまでの水蒸気と気温のさまざまな変化を形に刻みながら、雪の結晶は落下してくる。「雪は天から送られた手紙である」という中谷宇吉郎博士の言葉は、このことを意味しているのだ。


焼き物と似ている?

さらに、固体なのに、ぎゅっと握っただけで互いがくっつき、雪玉を作ったりできるのも、雪の特性がなせる技だ。「これは、焼き物と同じ現象です」と古川教授。「粘土は成型して乾かしただけでは非常にもろい。でも、高熱で焼くとしっかり結びついて固い焼き物になります。これを焼結といいます」。雪にも焼結があるのだ。もちろん、融点以上に熱すれば、とけて形が崩れてしまう。

では、0℃に近い冷たい雪がなぜ焼結するのか。実は、水の融点は0℃だから、雪は水が液体から固体へ変化したばかり。つまり、焼き物なら炉の中で真っ赤になってとける寸前の「熱い」状態なのだ。だから、簡単にくっついたり伸びたりするし、少し温度が下がればすぐ固まってしまう。雪が作るさまざまな造形や景色も、この性質がなければまったく違ったものになってしまう。


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